OHTAKI'S MODERN CARTOON

病室にての巻

年末にチチオヤが倒れて、生きるか逝くかの日々が10日ほどありまして。

完全看護の病院で患者以外の宿泊は認められていなかったのですが、マーそんな状態なのと、個室をとったということもあって、特別にハハオヤとアニとワタシで病室に泊まり込みました。
夜、小柄なハハオヤは病室内の長椅子で眠り、180センチのアニと161センチのわたしは交代でキャンプ用マットと寝袋で眠ります。3時間ずつくらい交代で起きてはチチオヤの状態を見守るわけです。深夜、看護婦さんが点滴をとりかえにやってきては足元のアニやわたしにケッつまずくという申し訳なさでした。

これが2日もすると、慣れてくる。これが日常になってくる。
日常だから、食欲もでるし冗談なんかも言う。
居心地を求めて毛布や本や懐中電灯なんか持ち込んで、給湯器の熱湯でコーヒーを煎れるなんて小技も自然にできるようになる。

一族だけの病室は、すっかり居住空間として成立しはじめるわけです。
そこでは、チチオヤもちゃんと「意識のないチチオヤ」としての役割があって、「オヤジ目が醒めたら怒るよなー」なんて、会話に組み込まれていたりもする。意識のないチチオヤを囲んでハハ・アニ・わたしの3人で交わすチチの若き日の失敗談などなどよもやま話。
ちょっとした「茶の間」感。囲んでいるのはちゃぶだいではなく眠るチチですが。

個室内にはちゃんとトイレもあって、個室イン個室なわけで、これがもう居住空間化に拍車をかける。ちゃんとウォシュレットですし。

そのウォシュレットを無意識に使ったところ「うぎゃっ!」
たまげたたまげた。
スゲー勢いで水がぶつかってきたのですね。目盛りを見ると「強」。
わたしは別にそっちの病気があるわけではありませんが、そんな勢いで洗ったことは一度もありません。そんな勢いで洗おうと思ったこともない。怖くて。そもそも、あんな勢いで洗わにゃイカンもんですかね?
しかし、この病室ではそういう勢いになっている。

ふうむ。

わたしは自分好みの勢いにして(限りなく弱に近い)ウォシュレットを後にしたわけです。

そして次にウォシュレットを使ったとき。
「うぎゃっ!」
また「強」になっている。
これは、誰かが意図的に「強」を選択しているということになりはしませんか。
とはいうものの、この病室は現在大滝家出張所のような有り様で、つまり、わたし以外の大滝、アニかハハが「強」にしているということです。

どっちだ?
「強」なんかで洗っているのはどっちなんだ?

わたしは、ウォシュレットをさりげなく見張りました。マーお見舞いの人もいらっしゃるわけですが、わざわざ個人病室のトイレを使うかたはそういない。そのうちハハが入っていきまして。
ホホホ、かかったな。なにかわかんないですが、まあそんな気分ですね。ハハの出てきたあと、十分に時間をおいてお手洗いへ。(やっぱり血族の直後はちょっと嫌なもんです)
すかさずウォシュレットの目盛りを見る。「強」でした。
こいつか!

ひとあんしんです。ハハの後は要注意、と。

翌日、「うぎゃっ!」
ハハの後ではありませんでした。前に使ったのはたしかもうひとりの大滝、アニです。油断していました。大滝家では、ハハもアニも「強」で洗っているようなのでした。

わたしがそんなことに執心しているうちに、チチは生きることにしたらしく、回復をはじめました。
 

tulipa@mamioh.com *MAMI OHTAKI*

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