OHTAKI'S MODERN CARTOON
いいのわるいの言うわけじゃないがあの空の下のことを思うとの巻

ことしのはじめの話です。
我が家の窓ガラスがびりびりびりびり振動し、そのうち家全体がががががががががががと鳴り始めたのです。
ナニゴトかとテラスに飛び出してフト空を見ると、漫画のように「どきん」と胸が一回大きく鳴って時間が一瞬止まった様な気がしました。

我が家の上空には米軍のカーキ色の荷送用大型ヘリが矢印形に編隊を組んでみっしりと空いっぱいにひろがっていたのです。

横浜に引っ越して以来、米軍のヘリがしょっちゅう上空を飛んでいくのは慣れっこです。近所には根岸もあるし遠くには横須賀がある。それでもこんなのを見たのははじめてでした。

たぶん、相当大きな音がしていたんだと思うのですけど、もうそんなことは覚えて居ません。ただもう驚いて気が付いたら全身が心臓になったような胸のどきどきだけが感じられて指先と膝が震えていました。

こわい。とかそういう言葉や感情の状態なのかもわかりません。
ただ、ガツン!ときていたのです。

わたしはけっこうそういうときすぐデータを残すほうなのですが気が付いたときにはヘリたちは遠くの空に消えていくところでした。目の裏に焼き付いたヘリの数を数えるとたしか15、6機以上はあったと思います。

たった20機にも満たないヘリが、うちの窓ガラスをあんなにも鳴らして家じゅうを揺さぶり、わたしは、こんなにも胸をどきどきさせてくるしくてたまらない。

高度成長期に生まれたわたしは小さい頃から無茶をするわけでもなく、ひとりでイラストばっかり描いて暮らしてきた兎のような人間なので、肝っ玉が小さいです。悪意とか、人前に出ることや、感じの悪い人の集まりとか、「怖い」ことは山のようにありますが、あれは、あのヘリはいままでのわたしの「怖い」ではなくて、そういうことばで出てくるものではなくて、もっと身体の芯からが怯えてしまうようなものでした。

「珍しいもの、面白いものを見ている」という興奮もあったけど、でもそれだけではない。もっと本能的なところでの、怯えというか。

ああ、本来「こわい」ってこういうことなのかもなあ、なんて、あとで思いました。平和な発想で申し訳ないことです。いかにも平和ボケですわい。

3月の20日から毎日流れるCNNやBBCの画像を見ながら、思います。
たった20機足らずの貨物ヘリが頭の上を通り過ぎるだけですら、あんなに空気を震わせるのに。
あんなに、威圧感を感じるのに。
あんなに、おびえて、どきどきするのに。
 

tulipa@mamioh.com *MAMI OHTAKI*

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